ティンパニマレットの巻き直し方法

「ティンパニマレットの巻き直しってどうやるの?」という声にお応えし、
写真付きでリペア方法を解説します。

ハード~ミディアム・ハードくらいの硬さのマレットの巻き直しです。4mm厚に剥いだフェルトを2重に巻いていきます。
まず芯の大きさを測ります。芯の底部角から反対側の角までの長さを、メジャーで測ります。
(図のように、矢印から矢印までの直線)

先程測った長さを直径にして、フェルトを丸くカットします。
コンパスやテンプレート(円や四角の穴が空いている定規)で10mmのフェルト(ドイツフェルト※)に円を描いて、ハサミで切ります。
その際、手芸屋で売っている先の曲がったハサミを使うと切りやすいです。

フェルトを切ったら半分(5mm)に剥ぎます。今回は4mmにしたいので、さらに内側の1mm分を剥ぎます。

※マレット用のフェルトは楽器店で販売しています。

フェルトに糸を通します。私が使用しているのは皮縫い用の麻糸(紐)などです。
縫い方は左図のとおりの波縫いです。
縫い幅はフェルトの厚み直径によって異なりますが、今回は直径54mm・厚さ4mmのフェルトを使っていますので、約2~3mmの間隔で縫いました。

縫い終わったフェルトを芯にかぶせて糸を絞ります。
結ぼうと思っても勝手に緩んでいきますので、結ぶ前に糸が緩まないよう止めておかなくてはなりません。
私はフット・ペダルを改造した道具を使ったり、特殊な結び方をしています。
専門の道具や特殊な結び方の知識がなくても2人いれば、1人が押さえている間にもう1人が結ぶ、という事ができます。

結び終わったら余分な糸を切り、結び目をフェルトと柄の間に入れます。
(マイナスドライバーを使うと便利ですが、柄を傷つけたり糸を切ったりしないようお気をつけ下さい)

フェルトの皺(ヒダ)を針の先で起こします。
(中に通っている糸を切らないようご注意下さい)
皺が起きたら毛羽立った部分をハサミで整えて下地巻きの完成です。

2回目の巻き(上巻き)は、柄の根元から反対側の根元まで測ってその長さから4~8mm引いた数値がフェルト直径になります。
下地巻きと同じ工程でフェルトに円を描き、それを切り、糸を縫って下地巻きの終わっているマレットにかぶせます。

~下地巻きと上巻きの違い~

  • 下地は糸を1本で縫ったが、上巻きは2本で縫う事
  • 下地はフェルトの円周より針1本分くらい内側を縫ったが、上巻きは 針2本分くらい内側を縫う事(縫いの間隔も3~4mmと、若干広く)
  • 結んだ後も「仕上げ縫い」という工程を行う場合、柄とフェルトの間の隙間を塞いでゆく為、糸をすぐには切らない事

仕上げ縫い

針の付いている糸のみ残した状態にします。
結び目のすぐ近くから糸を通します(柄とフェルトの隙間から外側に)
糸を出した所からまた針を差込み、フェルトの端部分に糸を通して約1周したら糸を引っ張って隙間を締めます。締め具合の調整で2周くらいになる事もあります。

最後に針をフェルトと柄の隙間(といってもほとんど空いていませんが)から出して、2本中1本を切り、針を糸からはずして結びます。

仕上げ縫い 補足説明

フェルトの角の部分(補足図_1)を柄に寄せる為の縫いですので、仕上げ後は補足図_2のようになります。
つまり糸を通すのは補足図_3の箇所に通します。巾着袋の紐と原理は同じですが、フェルトの角付近に糸を上手く潜らせて通さなければいけないので難しいです(赤い点の箇所)。

針は基本的に曲がったものは使っていませんのでフェルトの中に針糸が入ったまま一周はできません。
ですのでフェルト外周に針糸を1/4周くらい通したらフェルトから出して、またその部分から針を通して少しずつ作業を進めていき一周~一周半したら糸を引っ張って隙間を締めます(補足図_4)。

難しい作業ですが、これが決まれば見た目の美しさだけでなく、弱打時と強打時のタッチ差(硬さの差)が少なくなり、音色に均一性が生まれます。